~ひとり一人が大切にされ誰一人も排除されない社会の実現を願って~

旧優生保護法の下で、障害のある方が不妊・中絶手術を強いられたとして国に賠償を求めた訴訟 に対して、8 月 3 日、神戸地裁が原告側の請求を棄却したことに強く抗議します。 旧優生保護法は、優秀な能力を持つ者の遺伝子を保護すべきだという優生思想に基づき1948 年に制定されました。脳性麻痺のある原告の女性は、12歳の時に知らないうちに親に不妊手術を 受けさせられ、結婚した後も子どもができないことを理由に離婚に至りました。聴覚障害の夫婦は 妊娠後に中絶を強いられ、十分な説明も受けないまま不妊手術も受けました。憲法に保障された 「生命の自由、幸福追求の権利」が、国の政策において障害者を「不良な子孫」として断絶させられ、 それが1996年まで放置されてきたという事実は、決して葬ってはいけない、そして繰り返して はいけない「最悪の人権侵害」の歴史です。 判決では、この旧法が憲法に対して「違憲」であったことを認めたものの、手術から20年以上 経過していることを理由に、賠償請求を退けました。原告の苦しみ、悲しみは年月を経ても消える ものではなく、国の政策の過ちに対して何の謝罪も補償もないという姿勢には、怒りしかありません。 私たち障害児学校の教職員は、障害があっても懸命に生きる子どもたちの成長を願い、そして子 どもたちの未来をともに描けることを願って日々教育活動に励んでいます。子どもたちには「大き くなったら・・・」「卒業したら・・・」「将来の夢は・・・」と、語りかけているのです。そして 子どもたちは「将来は、こんな仕事がしたい」「一人暮らしがしたい」「恋人がほしい」「好きな人と 結婚がしたい」「赤ちゃんが欲しい」どれもこれもだれもが当たり前に思い描く夢です。悲しいこ とに、優生思想は過去のものではありません。現代もなお雇用、医療、教育、言語などあらゆる生 活の場に根をはり、子どもたちが夢をはぐくみながら安心して生活ができる社会にはなっていません。 2016年に起きた相模原事件の背景にある優生思想は、今も社会の中に巣くっています。 障害があろうがなかろうが、決して決して命に軽重はありません。決して命の選別を許してはな りません。私たち兵庫県障害児学校教職員組合は、一人ひとりが大切にされ誰も排除されない社会 の実現を目指しています。今回の判決に強く抗議するとともに、「まだ闘う」と表明されている原告 団を今後も支援し、共に闘う決意です。

2021年8月 兵庫県障害児学校教職員組合 執行委員長 中西園枝